20150216

来月から住むおうちを決めに大阪へ行った。おうち選びはスルスルと進み、帰りに新しい洗濯機を買ってもらってニコニコとした。夕食は家族揃ってごはんへ行き、エビやアワビがあり、お酒がおいしかった。この日はバレンタインデーで、父と弟にはチョコレートを、母にはハンドクリームをプレゼントした。お酒に酔い、深く眠った。翌朝は市場に行き新鮮なものを眺める。わたしは市場の雰囲気が昔から苦手だ。それはきっと生鮮品を扱っているからなのだろうけど、今!今売らねば!という勢いのお店の人と、それをフーンワアスゴイと交わす観光客の人と、その脇でゆっくりと確実に鮮度を失ってゆくお魚や甲殻類たちの、みんなの気持ちのベクトルみたいなものがてんでバラバラで、わたしは拠り所がなくなってしまうのだとおもう。あと大きな声を出す人がこわいというのもあるのだけど。24歳のおわりになっても市場はやはりすこしこわかった。こわがるわたしをあやすように父がマグロの握りやふぐのお味噌汁をどこからともなく買ってきてわたしに与え、それらはハチャメチャにおいしい。父はわたしがおいしいものをおいしいと言って食べるときとても嬉しそうな顔をする。駅で両親と別れ、空港に向かう。わたしは飛行機に乗ると必ずなにかある。行きの飛行機は出発が2時間遅れた。帰りの飛行機は定時に離陸したのだけど、到着する予定の新千歳空港の滑走路が1本だめになってしまったらしく、青森上空で2時間待ちぼうけをくらった。揺れにつられ眠り、起きると窓の外の空の色がさっきより濃くなっていくのを確認することを、何度か繰り返す。新千歳空港についたときにはもうヘトヘトでそのあとの電車もタクシーもよく覚えていない。雪のなかやっと自宅に戻り、おうちだー!とベッドに倒れこんだ瞬間、あ、このおうちはもうわたしのおうちではないのだった、と思う。わたしのこれからのおうちは大阪にあり、大阪のおうちが決まったときから、このおうちはそれまでのあと1ヶ月を過ごす仮の住まいになったのだ。なんだっけ、だれかの本の内容を思い出す。女性の体内の卵の数はおかあさんのおなかにいるときがいちばん多くて、それからだんだん減ってゆくこと。だから、初潮はまるで女としてのはじまりのようだけど、それは同時に女としてのおわりへと着々と進み始めたことでもあるということ。だって卵は有限だから。今までわたしのおうちだと思っていたこの札幌のおうちが、期限付きの、有限なものになってしまった。そう思うと途端に居心地がわるくなってきて、おずおずと服を脱ぎ、眠る準備をした。その夜の夢は飛行機で雨雲に突入する夢で、起きたらひどい頭痛があった。懸案事項やひどく記憶に残っていることが夢に出てくる体質を、早く治したいと思った。